住友重機械イオンテクノロジー株式会社
佐藤浩二さん(仮名・調達) 34歳
瀬戸内海と石鎚山に抱かれた故郷にUターン。心身のゆとりを取り戻した。
愛媛県西条市出身の佐藤さんは、高等専門学校で電子制御工学を専攻。就職を機に地元を離れ、広島と愛知の自動車メーカーで、品質不具合対応やコネクティッドサービス企画などに携わってきた。
しかし、もともと地元への愛着が深く「いつかは地元に戻ろう」と考えていた。具体的なタイミングは決めていなかったが、新型コロナウイルスの影響で帰省が難しくなったことでより一層地元への思いが強まり、転職活動をスタートさせたという。
現在は、産業機器メーカーの愛媛事業所に勤務。大好きな瀬戸内海と石鎚山に抱かれた土地で、調達という未経験の仕事にチャレンジする佐藤さんに、愛媛での生活について伺った。
※本記事の内容は、2021年12月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 2回
- 活動期間
- エントリーから内定まで60日間
転職前
- 業種
- 自動車メーカー
- 職種
- 海外市場向けサービス企画
- 業務内容
- 販売された各車種の品質不具合に関する情報を収集し、品質改善を行い、修理方法や情報を市場(販売会社)にフィードバックや、必要に応じてリコール情報をリリースする業務を担当。
転職後
- 業種
- 半導体製造装置メーカー
- 職種
- 調達
- 業務内容
- イオン注入装置で必要な電磁マグネットや高電圧電源等の電気部品調達。
実家で農業を営む父母の手伝いに行けないのが、もどかしかった。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
半導体製造の前工程で扱われる「イオン注入装置」という産業機械を開発・製造する企業の愛媛事業所に勤務しています。イオン注入装置とはパソコンやスマホ、自動車や電化製品など様々な機器に搭載されている半導体を製造するための装置の一つで、製造する半導体の種類によって注入するイオンの特性が異なるため、当社の製品はオーダーメイドが基本になります。
その中で私は電磁マグネットや高電圧電源といった電気部品の調達を担当し、部品を扱う商社に対してコストや納期、品質の管理などを行っています。
入社前のご経歴を教えてください。
地元の高専を卒業後、広島にある自動車メーカーに就職しました。そこでは、世界中で販売されていた各車種の品質不具合に関する情報を収集して品質改善を行い、修理方法や情報を市場(販売会社)にフィードバックしたり、必要に応じてリコール情報をリリースする業務を担当していました。
その後、愛知県に本社を置く自動車メーカーに転職。近年、ICT機能を持った自動車が注目されていますが、そうしたコネクティッドサービスを企画する部署で、海外市場向けのサービス企画を担当していました。
転職のきっかけは?
もともと地元への愛着が強かったので、広島で働いているころはよく帰省していました。でも、愛知県に転職してからはそうもいかなくなりました。
実は、両親が農業を営んでいて、米や麦、野菜など結構手広くやっているんですが、二人とも年を取り、以前のようには動けなくなってきて。「自分が近くにいれば手伝えるのに…」と思い始めた矢先、コロナ禍になってますます帰れなくなってしまったんです。
前職では手ごたえのある仕事に携わっていたので迷いもありましたが「今がUターンのタイミングなのかもしれない」と、2度目の転職を決めました。
転職活動はどのように進めましたか?
最初は大手転職サイトで探していたんですが、私が希望する「西条・新居浜エリアで県外転勤のない会社」という求人はなかなかヒットしませんでした。自治体が運営するU・Iターン支援窓口にも登録して連絡を待ちましたが、こちらも思ったような結果につながらない。焦りを感じながら、ネットで情報を集めるうちに出会ったのがリージョナルキャリア愛媛でした。
四国の転職に特化しているとはいえ、そう簡単には見つからないだろうと覚悟していましたが、登録からほどなくして私の希望を満たす企業を何社かピックアップして紹介してくれました。現在勤務している住友重機械イオンテクノロジー社もその中の一社です。
住友重機械イオンテクノロジー社はフリーポジションでの募集だったので、人事担当者の方とじっくり話をするなかで「調達業務ならこれまでの経験を生かせるのではないか」と提案をいただき、未経験の仕事でしたが挑戦してみることにしました。
今の会社に決めたポイントは?
もともと自動車業界で海外市場に対する業務を行っていたことから、愛媛でありながら世界の半導体市場に対して事業展開をしているという点に興味を持ち、未経験ではあったもののこれまでの経験が活かせるのではないかと考えたからです。
そして、実家からも近いため仕事が終わった後でも農業の手伝いに駆けつけることができそうで、他社に比べて年間休日も多かったこともあり「これなら両親をしっかりサポートできそうだ」と思いました。あとは給与が下がらなかった点もありがたかったです。
たとえ未経験の仕事への転身でも、前職で得た知識は何らかの形で活きてくる。
転職していかがですか?
調達の仕事は未経験でしたが、住友重機械グループで行われる研修で、機械加工品の図面の見方や、調達の基本的な考え方などを学ぶ機会を設けてもらい、スムーズに業務に入ることができました。
私が担当するイオン注入装置の調達業務は、大きいものだと装置1台分で数億円の規模になります。金額的にも大きいし、万が一、部品が入ってこなければ1台当たり数億円の売上が飛んでしまう。経営に大きなインパクトを与えかねない仕事なので、気が抜けません。
特に今は世界的な半導体不足で、部品の調達が難しい状況ですから、その中で、商社やメーカーとの交渉がうまく運び、無事に部品を調達できたときは達成感がありますね。
自動車業界では、品質トラブル等について社内外問わず多数の関係者を巻き込みながら納期までの解決が必須であったため、そういった折衝力は発揮できていると思います。
転職して良かったと思うことは?
仕事面においては、調達というミッションを通じて様々な部品メーカーや商社とのお付き合いがあるため、製造業におけるサプライチェーンへの知見が広かったことですね。特に当社のイオン注入装置は、1台あたり数千~数万部品を必要とするため、なおさらそう感じます。
プライベート面では、休日は実家に帰って両親の手伝いをしています。やはり家族がそばにいると安心して暮らせますね。精神的な余裕というか…、そんなものを感じます。
困っていることや課題はありますか?
しいて言えば、都会に比べてサービス関連の選択肢が少ないところでしょうか。例えば私は以前、名古屋市内のジムに通っていたのですが、同様の設備が整ったジムに通おうと思えば松山市あたりまで出かけないといけない。そういったところはちょっと残念だなと思いますが、それ以外はとくに不便は感じないですね。
生活面の変化はありましたか?
前職では、地下鉄で片道1時間ほど満員電車に揺られて通っていましたが、今はバイクで15分です。毎日の通勤が本当に楽になりました。また自然が豊かなので、休日には山歩きも気軽に楽しめる。コロナの影響で遠出の機会が減っていますが、以前は徳島まで足を延ばして、大歩危・小歩危でラフティングを楽しんだりもしていました。アウトドア好きには絶好の環境です。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
これまでの経験にとらわれず、視野を広げて探してみるのも手だと思います。私自身も未経験の仕事に飛びこみましたが、やってみると意外となんとかなるものです。それに前職で学んだ電気や機械などの基礎的な知識は、今の仕事でも十分役に立っている。ムダな経験ってないんだな、と改めて思いました。
あまり考えすぎず、思い切って一歩踏み出してみるといいと思いますよ。