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世界の水問題の解決に貢献する「水ビジネス・プレイヤー」へ。

株式会社ダイキアクシス
代表取締役社長 CEO・CIO 大亀 裕貴

更新日:2025年10月08日

1992年、愛媛県松山市生まれ。スイス公文学園高等部を卒業後、早稲田大学国際教養学部に進学。在学中にイギリスへ1年間留学。2016年に株式会社日立製作所へ入社し、電力事業に携わる。2018年、株式会社ダイキアクシスに入社。海外事業、経営企画、採用教育、IT企画など幅広い領域を統括し、専務取締役などを経て、2024年1月より現職。高校時代に訪れたザンビアでの体験を原点に、世界の環境課題解決に情熱を注ぐ。2023年、早稲田大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

創業から受け継がれる、不屈のDNA。

私たちの原点は、1958年に祖父が創業したタイルと衛生陶器の専門商社にあります。祖父の「故郷の水回り環境を良くしたい」という切実な想いは、「スッテモムイデモ(伊予の方言で「何がなんでもやり抜く」の意)」という不屈の企業理念のひとつとして今も息づいています。

この精神は、現在の私たちのコーポレートスローガンである「PROTECT×CHANGE」にも深く繋がっています。これは、創業者の想いを守りながら(PROTECT)、時代の変化に対応して事業を変えていく(CHANGE)という私たちの姿勢そのものです。

そして、その根底には常に「環境を守る。未来を変える。」というコンセプトがあります。この精神こそが、私たちをいち商材の商社から環境創造開発型企業へと進化させる原動力となりました。

具体的な事業としては、大きく分けて三つ展開しています。

一つ目は、家庭用の小型浄化槽から食品工場や化学工場、病院といった大規模施設向けの産業用排水処理プラント、さらには地下水を安全な飲料水に変えるシステムまで水処理に関するあらゆるソリューションを提供する「環境機器関連事業」です。

製品の開発・製造から施工、そして全国を網羅する24時間体制のメンテナンスまでを一気通貫で行える体制が強みです。

二つ目は、創業時からの事業であり、時代のニーズに合わせて進化を続ける「住宅機器関連事業」です。

トイレやキッチンといった水回り設備の卸売を長年手がけてきましたが、近年はその知見を活かし、タイルや石材を用いた内外装工事、さらには資材調達から構造設計、施工までをトータルで担う木構造事業にも力を入れています。

木材の持つ温かみや機能性を活かし、保育園やオフィス、小学校の校舎など、自然と調和した建築物を社会に提供しています。

そして三つ目が、未来を見据えた「再生可能エネルギー関連事業」です。

家庭や飲食店から回収した使用済みの天ぷら油をリサイクルしたバイオディーゼル燃料「D・OiL」の製造・販売や、太陽光・風力発電所の運営を通じて、持続可能な社会の実現に直接的に貢献しています。

新たな中期経営計画の発表。

社長就任後、私が最初に取り組んだ大きな仕事の一つが、私たちの未来を示す新たな成長戦略の策定でした。

前回の中期経営計画は、売上目標を1年前倒しで達成するなど一定の成果を上げましたが、一方で円安や原材料価格の高騰といった策定時には想定し得なかった外部環境の大きな変化にも直面しました。

こうした状況を踏まえ、会社の進むべき方向性をより明確に打ち出すため、2025年3月に新たな「中期経営計画(2025-2027)」を発表したのです。

この計画で私たちが最も強く打ち出したのは、単なる国内の浄化槽メーカーから、世界の水ビジネス全般を手がける「グローバルな水ビジネス・プレイヤー」へと進化するという明確な意志です。

これは、中長期的に上水から下水、産業排水、海水に至るまで、水に関するあらゆる課題解決に貢献する企業に変革していくという宣言です。

2030年に100兆円を超えると予測される巨大な世界の水ビジネス市場を見据え、私たちは2027年度に売上高530億円、経常利益15.5億円という、いずれも過去最高を更新する目標を掲げました。

この挑戦的な目標を達成するため、私たちは事業のあり方そのものを再定義しました。これまでの各事業が独立して動く「ポートフォリオ型」から、それぞれの事業が連携し、グローバルベースでシナジーを追求する「シナジー型モデル」へと転換します。

具体的には、海外事業を最大の成長ドライバーと位置づけ、国内事業をその成長を支える収益基盤であると同時に、新たなソリューションを生み出すR&Dエンジンとします。

この変革を加速させるため、今後3年間で50億円の成長投資枠を設定し、グローバルな生産設備の強化、人材育成および採用、ITシステム導入、そしてM&Aなどに戦略的に資金を配分していきます。

この中期経営計画は私たちの壮大なビジョンを実現するための具体的かつ実行可能なアクションプランなのです。

製品ではなく「仕組み」を輸出する。前例なきインドモデルの挑戦。

このグローバルなビジョンを実現するための試金石が、10年以上の歳月をかけて市場そのものを創り上げてきた「インドモデル」です。

私たちが海外に目を向けたのは、日本の市場が成熟期にある一方で、世界の水ビジネス市場には100兆円規模の巨大な成長ポテンシャルがあるからです。

特にアジアやアフリカの新興国では、経済発展に伴い水インフラの需要が爆発的に高まっています。しかし、そこには大きな壁がありました。

浄化槽という製品は、日本の公共規格がベースになっているため特許で強力に保護することが難しく、製品単体での差別化が困難だったのです。

そこで私たちが目指したのは、製品を売り込むのではなく、メンテナンスまで含めた日本の「浄化槽法」のような仕組み全体を現地に導入することでした。

知財で守るのではなく、現地の「ルール作り」、いうなれば「まちづくり」そのものに深く関与していくという、極めて息の長い戦略を選んだのです。

現地の政府機関と粘り強く対話を重ね、日本の高い設計基準をインドの国家規格に採用してもらうことに成功しました。

皮肉なことに、市場に現れた安価で低品質な模倣品が次々と問題を起こしたことで、かえって品質とサービスを一体で提供する私たちのビジネスモデルの正しさが証明される結果となったのです。

この前例のない挑戦は、ガンジス川の支流浄化プロジェクトやインド国鉄の駅リニューアルプロジェクトへの参画といった形で着実に実を結びつつあります。

中期経営計画においてもインド事業は成長戦略の要と位置づけており、2024年時点で6億円だった売上高を2027年には21億円へと成長させ、1.6億円の赤字から1.8億円の黒字へと転換させる計画です。

この「インドモデル」は、あくまで私たちの海外展開の第一歩です。すでにインドネシア、スリランカ、中国にも拠点を構え、2024年からはバングラデシュでも事業を開始しました。

それぞれの国の文化や発展段階に合わせてモデルを最適化し、展開していく。それが私たちのグローバル戦略の骨子です。

日本を世界のR&D拠点へ。国内事業と海外事業が描く成長のシナリオ。

海外事業の急成長は、国内事業の役割にも大きな変化をもたらしています。国内事業はこれまで、水処理、住宅、再エネという三つの事業が、それぞれ独立して動いてきました。

しかしこれからは、三本の柱をいかに重ね合わせ、一つの円にするかを追求します。日本市場はそのための実験場であり、開発拠点となるのです。

例えば、ある工場に対して私たちはトータルソリューションを提供できます。

まず、中核技術である高度な排水処理システムを納入する。その稼働に必要な電力は工場の屋根に設置した太陽光発電システムで賄い、事務所棟などの建設には私たちが近年力を入れる木構造建築の技術を活用する。

このように、国内で磨き上げた統合モデルこそが私たちの長期的なグローバル戦略の根幹をなします。

住宅機器事業で進めている「ソリューション型ビジネス」への転換も、その一環です。

単に空調機器を販売するのではなく、店舗設計の段階から関わり、来店者数向上といった「課題解決」そのものを価値として提供する。こうした高度なビジネスモデルを国内で確立し、海外へ展開していきます。

まずは浄化槽を中心とした「日本の公衆衛生」を輸出し、国が発展した段階で、より快適で持続可能な社会を実現するための統合ソリューション、すなわち「日本の快適」を輸出する。この二つの波で、世界市場を開拓していきます。

変革を牽引する、新たな仲間を求めて。

この壮大なビジョンと、それを裏付ける中期経営計画を達成するためには、実行力のある強い組織が不可欠です。社長に就任して以来、私は矢継ぎ早に組織変革に着手しました。

ビジネスチャットツールを導入して部門を超えたフラットなコミュニケーションを促進したり、全国の拠点を回る「タウンホールミーティング」を開始して現場の声に真摯に耳を傾けたりと、より風通しの良い組織文化の醸成に努めています。

しかし、変革の道のりは平坦ではありません。長年「背中を見て育て」という文化で育ってきた管理職と、今の若い世代との間には、コミュニケーションにギャップがあります。

これはどちらが悪いという話ではなく、管理職側もどう指導すればいいか分からず悩んでいるのが実情です。

会社として新しい時代のマネジメント手法を浸透させ、評価制度も含めてアップデートしていく必要があり、課題意識をもって取り組んでいます。

これらの大きな変革をさらに加速させるため、私たちは外部からの新たな知見とリーダーシップを積極的に求めています。私たちが今求めているのは、理念に共感して会社の未来を共に創ってくれる仲間です。

上場企業としての経営戦略やグローバルなマーケティング、そして世界基準の組織作りをゼロから一緒に考えて実行していける情熱と能力を持った方々と、ぜひ一緒に働きたいと思っています。

愛媛に根差し、世界を見据える。地方にいながらグローバルな感覚で、地球規模の社会課題に挑む。そんな新しい働き方、新しい豊かさを、未来の仲間たちと共に創り上げていきたいと心から願っています。

編集後記

コンサルタント
川田 基弘

今回のインタビューでは、31歳という若さで上場企業の3代目社長に就任された大亀裕貴社長の熱い思いに触れることができました。

「PROTECT×CHANGE」という経営理念に込められた創業者の「スッテモムイデモ」の精神を守り抜き、若きリーダーが世界の水問題解決に本気で挑む姿には、心を打たれるものがありました。

特に印象的だったのは、水処理、住宅、再生可能エネルギーという各事業を統合し、国内で磨き上げたトータルソリューションを海外展開の武器としている点です。

そしてインド事業においては、製品の輸出にとどまらず、「仕組み」そのものを現地に根付かせるという前例のないアプローチが、新たな市場を創造する同社の強みを明確に示しています。

伝統を守りながらも社会課題の解決に真っ向から挑戦し、新たな変革を恐れない同社。愛媛から世界へ、日本のビジネスモデルの未来を切り拓く可能性を秘めたその挑戦に、今後も注目していきます。

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