ICTで四国に貢献する。四国からセカイを変えていく。
株式会社NTTデータ四国
代表取締役社長 三木 隆弘
富山県出身。新潟の大学を卒業し、2000年、株式会社NTTデータに入社。金融分野の保険事業領域に配属される。課長代理、課長を経て、2015年に第一金融事業本部・保険ITビジネス事業部の部長に就任。以降、同事業部で事業推進部長、統括部長を歴任。2022年6月、グループ会社である株式会社NTTデータ四国の代表取締役社長に就任。
※本記事の内容は、2025年6月4日時点の情報に基づき構成しています。
コミュニケーション重視の組織マネジメント。
私はもともと北陸の出身で、大学は新潟でした。卒業してNTTデータに就職し、当時の人事担当から勤務地についてヒアリングされた際に「ローカルがいい」と申し出たところ、千葉ニュータウンにある拠点に配属されました。その拠点は立ち上がって間もない新しい部署で年配者が少なく、所属メンバーの多くが若手社員でした。
ちょうど保険業界では合併対応などでIT投資を増やしていたため、保険会社をクライアントとしていた同部署の業績はどんどん伸びていきました。特にお客さまに評価されたのが、品質と納期に関する安定性です。NTTデータには、金融・保険業界の基幹として動くレガシーなシステムにも対応できるノウハウが蓄積されていました。
私はそこに19年所属し、部長まで任されました。マネジメントに携わるようになって心掛けたことは、メンバーとのコミュニケーションです。年々成長していた部署なので、次々に若手が配属されます。協力会社の数も増加して私が部長になった頃には、ピーク時で社員やグループ会社の社員、各委託先の方々を含めて総勢700人程の体制になっていました。
人員が拡大すると関係性が希薄化し、同じフロアで働いているのに名前も知らない、ということが起こってきます。私は社員以外を含めてプロジェクトに関わる方々の顔と名前を覚えるようにし、廊下ですれ違う時は声をかけ、困りごとはすぐ報告してもらうようにしていました。
チームとして一体感を持ち、みんなで同じゴールに向かう組織を目指していたのです。そのおかげもあってか、部長になって3年目に当時の一部署としては非常に大きな売上である100億円を達成できました。
その後は本社に異動し、事業部の中で人事・総務・事業企画などを所掌するスタッフの部長や、複数の部署を所掌する統括部長を担当。2022年6月、NTTデータ四国の社長として愛媛に赴任することになりました。
メンバーの関係性を深め、組織の機能を強化。
NTTデータ四国に赴任した直後に感じた印象は、真面目なメンバーが多いということでした。自分の目標と誠実に向き合い、責任を果たす。そんな姿勢が根付いた会社だと感じました。
ただ、ちょうどコロナ禍でメンバーが対面する機会は少なくなっていました。メンバーの良さを活かして可能性を広げるため、私が最初に提示したのが五つの戦略です。
その一つ目に挙げたのが組織力の強化です。コミュニケーションを充実させることでメンバーのエンゲージメントを高めて成長を促し、リーダー層を拡充することで組織の機能を高めようと伝えました。
二つ目が新しい領域へのチャレンジ、三つ目が既存事業の安定的推進です。既存事業による収益基盤によって新たなチャレンジを活性化させる。そして、新たなチャレンジによって未来の基盤を増やしていこうと考えました。
四つ目がNTTデータのグループ力の活用です。NTTデータは東京に本体があり、全国に9社の地域会社があります。この中には多くの情報、事例が集積されており、それらを利用すれば当社の事業をもっと進化させられるはずです。
五つ目は、レジリエンス。すなわち、コンプライアンス、ガバナンス、セキュリティといった一企業として当たり前のルールを遵守するという意味です。
とりわけ力を入れたのが一つ目の組織力強化で、1年目はここに大半の力を注ぎ込みました。コミュニケーションに力を入れ、みんなで達成感を味わえた千葉での経験が思い出されました。メンバーと話し、それぞれの意欲を受け止めることが社長としての第一歩と考え、ここから取り組みました。
スピード感を持って動くことで、社員に刺激を与える。
まず、一般社員との対話会を実施しました。数名に分け、私と私の右腕である経営企画部長と一般社員だけで、仕事や現場の課題、職場への要望などについて意見を交わしたのです。
対話会を行って数ヶ月で課題をまとめ、できることは間を置かず改善に取り組みました。例えばネットワーク工事を行う際の作業服を支給したり、コロナ禍で少なくなった対面イベントを開催し、要望の強かったみんなでの記念写真を撮ったりと、すぐに実行できるものは即決していきました。それにより社員が「この社長は、すぐに動いてくれる」と実感してくれたようです。
研修も見直しました。以前は2年目研修の後に同期が集まる機会は9年目研修しかありませんでした。しかし、近年は事業が広がり、チームが分かれてしまうと同期とはいえ業務が見えにくくなります。「ちょっと間が空き過ぎではないか…」そんな課題を感じて、3年目・5年目・7年目で研修を行うように指示したのです。また、その年次に中途社員も同様に社会人歴で当てはめ、一緒に研修に参加してもらいました。
勤務地や部署を越えて、お互いどんな仕事につき、どんな課題感を持っているのか、今後のキャリアについてどう考えているか。同期と話す機会が増えたことで、刺激を受ける社員が増えました。また中途社員も加わることで自社にはなかった考えや価値観に触れる機会にもなっています。
まだまだできていないプランもあるので、いろいろ取り組んで、コミュニケーションをさらに活性化させていきたいですね。それが事業を発展させる原動力になっていくと考えています。
最先端技術への取り組みにも積極的。
NTTデータ四国には、四つの事業分野があります。一つ目は「公共」分野です。地方自治体の財務・庶務事務・土木・防災などに関するシステムや、行政サービス向上のためのDX推進に関わっています。
二つ目は「法人」分野です。企業に向けた基幹系システムの開発を中心として、DX化を推進することで業務効率化・生産性向上に寄与しています。三つ目は「金融」分野で、各金融機関の要望を受けて基幹系・営業系・決済系システムの開発を行っています。
そして四つ目の「先端技術」分野では、AIやローコード、クラウドといった最先端の技術を用いて新規サービスの開発を行っています。
中でも特徴的なのが金融分野の伸びです。地銀各行と信頼関係を築き、提案の機会をいただいています。特に決済領域には定評があり、自社ソリューションを日本の様々な企業に対して営業をかけるほどです。
また、先端分野でも独自の強みがあります。当社は2016年からローコード開発ツールのOutSystemsを使った案件に取り組んできました。
日本国内でもまだ実績が少ない時からどのような使い方があるか研究を始めて開発スキームを構築し、実際にシステムづくりへ応用できるまでになっています。この実績が認められ、NTTデータ本体が取り組むAIに関する研究開発にも携わることとなりました。
この研究開発には、世界に広がるNTTデータグループの精鋭が集まっており、当社のエンジニアも海外メンバーと頻繁にやりとりしています。地方にいながら世界のエンジニアと協力して開発に取り組むというのは、大きな刺激になっていると思います。
グループのリソースを活用してチャレンジできる。
当社のバックには、NTTデータグループの技術的・人的リソースがあります。それほど大きな蓄積がありながら、NTTデータ四国は250人くらいの会社なので、機動的に小回りよく動けます。リソースの多さと機敏性の高さが両立しているので、自信を持ってチャレンジができるわけです。
以前は、ミャンマー中央銀行のシステム開発に携わったこともありました。四国にいながら、その国の基幹となるようなプロジェクトにも関われる。そういった活動に前向きな姿勢があることは、とてもいいことだと思います。
NTTデータ四国は形のある商品を売る会社ではありません。私たちが提供するのは、人の発想やチャレンジ精神から生まれるソリューションであり、その価値をもっと高めなければなりません。
独自性の高いサービスやソリューションという点ではまだまだ努力の余地があります。お客さまの要求に対応するだけでなく、自社ならではの企画型ビジネスへのチャレンジを増やすのが今後の課題でしょう。カギを握るのは、やはり人財ですね。
NTTデータでは、人が財産であることから「人材」ではなく「人財」と表現します。新たなサービスやビジネスを創造できる人財は会社の価値向上に直結します。そのための育成環境を整え、意欲や能力のある人財が入社したいと思える会社にする必要があります。
実際に、自らが発見した社会問題をICTで解決したいと手を挙げて、挑戦している社員もいます。まだまだ実績作りには至っていませんが、小さな取り組みでも良いのでさまざまな実績が上がっていけば、地域課題の解決に向き合いたいと考える社員がもっと出てくるでしょう。
ICTで、四国地域の発展の一翼を担う。
人財採用に関する当社のキャッチフレーズは「四国から、みんなのセカイを変えていく」というもの。ICTによって四国はもっとよくなるし、それらを実現する技術力が当社にはあるのです。
嬉しいことに当社を志望する新卒人財は徐々に増え、地元の有力企業や公務員と競合するほどになりました。プレゼンスはだいぶ向上しましたが、まだ十分ではありません。
NTTデータ四国はどういった会社か、どんなことを解決できるのか、戦略的に広報して認知度を上げる必要があります。並行して、社員のエンゲージメント向上につながる環境整備も不可欠です。
当社は、「ICTによって四国に大きな影響を与え、地域貢献の一翼を担ってきた」と言っても過言ではありません。四国に来たい、帰りたいというキャリア人財は大なり小なり「四国に貢献したい」という想いを抱いているはずです。
NTTデータ四国でなら、その意欲を十分に活かせます。「四国から、みんなのセカイを変えていく」ことができるのです。
当社は以前からキャリア人財の受け入れを積極的に行っており、現社員の約40%はキャリア人財です。外の世界で培ってきた経験や観点は当社を進化させる貴重なエネルギーとなっているので、皆さんの抱く四国に対する気持ちを、ぜひ当社で発揮していただきたいと考えています。