企業TOPインタビュー

医薬品製造装置を愛媛から世界へ。多様な人材が成長の原動力。

株式会社トップシステム
代表取締役 森 達雄

更新日:2022年11月16日

1960年生まれ。大学を卒業後、ミノルタ株式会社(現:コニカミノルタ)に入社し、OA機器等の営業を担当。1989年、地元の製造請負業の会社に転職。半導体製造装置の営業として海外にも頻繁に足を運ぶようになる。1999年に独立し、トップシステムを起業。当初は半導体製造装置分野だったが、徐々に医薬品製造装置分野に事業転換を図り、現在に至る。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

医薬品製造に関わる調製や培養、不活化の装置・設備を独自開発。

トップシステムは、医薬品製造に関わる調製装置や不活化設備などを提供するメーカーです。調製装置は、ワクチンや抗がん剤、注射剤や点眼剤などの製造に用います。不活化設備とは、医薬品製造の過程で発生した産業排水中の病原体を、熱や薬液などで死滅させて排出するユニットを指します。

他にも、注射用水や仕込水の冷却に使うローカルクーラーユニット・サニタリー対応熱交換器や、ろ過送液時のロスを極限まで減らす残液激減システムなどがあり、多くが独自開発によるものです。

設立は1999年。私は前職で、顧客からのオーダーを受け、自社以外の別の所でそれを作ってもらって供給する、製造の請負業といった仕事に就いていました。主に取り扱ったのが半導体の製造装置で、私は台湾や韓国へ何度も足を運び、装置の商談を行っていました。当時、半導体製造において日本は世界のトップでしたから、そのプレゼンスを使ってアジア各国にノウハウを提供することができたのです。

前職で、日本のノウハウをアジアで展開する、アメリカの最先端技術を様々なビジネスに適用するスキルが身につき、人的ネットワークも築きました。これらをベースに、トップシステムを創業したのです。

そのような背景から生まれた会社なので、創業時の主力は、半導体製造装置・部品でした。当初は材料や機器の輸出入を手掛けましたが、品質を担保するには他人任せでは限界があるため、2002年に西条市ひうちに工場を建設。自らものづくりできる体制を整えていきました。

時代のニーズを読み、半導体分野から医薬品分野へ事業転換。

しかし、半導体業界は景気の浮き沈みがとても激しい業界です。好況期はとても忙しいのですが、谷間になると設備投資は3割くらいまで落ち込んでしまいます。

そこで着目したのが、医薬品製造設備の分野です。実は半導体と医薬品は、製造において共通部分の多い製品です。共に特殊なクリーンルームの中で作りますし、設備には耐食性の高い特殊な原材料が求められます。製造に多様なノウハウを必要とする点も同じです。

国は豊かになるほど、医薬・ライフサイエンスへの比重が高まっていくもの。そういった時代のニーズを感じ取り、創業して7、8年経った頃から、医薬品分野に進出したのです。

まずは下請けとしてものづくりをスタートさせ、徐々に設計者を採用していきました。設計部門が強化されると、上流工程からの製造にも対応できます。実績ができることで、元請けとして、すなわち製薬会社などと直接商談するように変わってきました。

お客様のニーズを直接聞ける立ち位置に来たことで、設計者を増やし、システムエンジニアやメンテスタッフを増やし、体制を充実させて、ニーズに合わせた製品を提供できるようになってきたわけです。

成長とは、形を変えながら拡大することです。ずっと同じことをやっていても、発展はありません。トップシステムはニーズに合わせて事業領域を変え、人材を揃えてきました。変化を恐れなかったからこそ、成長を遂げられたのだと思います。

ちなみに、当社の従業員数の約3割は女性です。西条市にありながら地元の出身者は少なく、北海道から種子島まで地元以外の出身者が6割を占め、1割が外国人です。地方のメーカーでは珍しいこうした多様性も、変化を生み出すのに貢献しているのかもしれません。

開発から製造、バリデーション、メンテナンスまでワンストップでサポート。

当社の強みの一つに挙げられるのが「まとめる力」でしょう。トップシステムは、調製や培養、不活化など、医薬品製造に必要なプロセス全てのニーズに、ワンストップで応えています。

新薬開発・新技術投入といった情報を基にした営業提案、操作性・保守性など将来を見据えた開発・設計。さらに品質を担保する製造、全国の協力会社ネットワークを通じた、きめ細かなメンテナンスなど、一貫したサービスの提供で、医薬品の製造現場をサポートしているのです。

医薬品製造装置を提供する上で特に重視されるのが、検査・バリデーション(検証)というプロセスです。医薬品製造は、1000回稼働したら1000回全く同じものが作れることを科学的に保証するデータが求められます。そのため、機器、配管、電気計装などを精密に検査し、装置の製造工程まで詳細に記録。レギュレーションに準拠した設備であることを証明するバリデーション業務を行うのです。

このバリデーションには、原子力発電所の設備と同等の厳格さが要求され、厚労省やFDA(アメリカ食品医薬品局)の査察に応えられるものでなければなりません。だから当社には、前職で原子力容器を扱っていた人もいます。この厳格で細かなドキュメントの作成・確認を支えてくれているのが、社員の約3割を占める女性なのです。

海外展開をさらに加速化。SDGs、IoTへも注力。

当社は創業時から、積極的に海外に出ていました。2004年には上海で合弁会社を設立、2013年には上海Tofflonとの合弁会社設立により、海外ネットワークを強化。2016年にはインドネシアに現地法人を、そして2019年には工場を開設しました。

私自身、前職時代を含め、これまで海外56ヶ国に足を運びました。行ったことのある都市は約270に及びます。多様な人と会ったおかげで、物事を多面的に見る視点が養われました。日本がプレゼンスを失う前に半導体業界からいち早く離れ、医薬・ライフサイエンスに軸足を移せたのは、その視点があったおかげです。

医薬・ライフサイエンスは、充実した人生を支える基本です。国が貧しいうちはまず食べ物が必要ですが、豊かになるにつれて欲しい物が増えていきます。そしてある程度の豊かさが達成されると、長く健康であるための医薬が欠かせなくなります。すなわち、国の成長とともに医薬品産業は成長するわけです。

2000年初頭、中国はやがてそうなるだろうとにらんでいたら、爆発的スピードで成長しました。次にポテンシャルを感じたのがASEANです。域内で7億以上の人口を抱え、しかも平均年齢20代の国ばかりなので、国の発展に伴う人口ボーナスはかなり大きいでしょう。当社が現地法人や工場を積極的に開設してきたのは、そのためです。グローバル展開は、今後もさらに加速するでしょう。

海外展開と共に今後の課題に位置づけているのが、SDGs、ESGへの取り組みです。医薬品業界でも、欧米などを中心にカーボンニュートラルへの動きが高まっています。その時流に応えていかなければなりません。当社では既に、化石燃料を使って水を沸騰させる蒸留法から、膜ろ過法に切り替えた装置を設計するなどして、化石燃料の大幅削減に舵を切っています。

もう一つはIoTです。ここに注力し、製薬プロセスの見える化・自動化をさらに進めます。製薬メーカーは、非常に厳しいレギュレーションの中で製薬に取り組んでいます。一つの製品を作るのに30種類もの原薬や添加物を、順番や量を間違えずに投入しなければならず、わずかでも工程を間違えたら、全量廃棄です。そういうストレスを軽減するには、IoTによる手順の自動化・見える化が欠かせません。

多様性や変化の中で、自ら答えを見つけ出してほしい。

トップシステムは変化することで成長してきた会社であり、その変化を支えるのは多様な人材です。その多様性は、これからも広げていきたいと思います。国籍を問わず多くの人に活躍してもらいたいし、女性ももっと増えていい。多様性があるからいろんな発想が生まれ、会社が面白くなるのです。

当社に加わる新たな仲間も、多様性や変化を楽しむ人であればいいですね。現状に満足せず、多様性の中でいろんな刺激を受けながら自ら答えを探す。そこにモチベーションを見出す人は、当社で成長できると思います。技術的な素養や専門性があるに越したことはありません。が、どの分野であれ、何か一つしっかり学んできたものがあれば、何とかなります。

また語学とコミュニケーション能力については、前向きに身につける姿勢を持っていてほしいですね。海外に出て対等に折衝するには、この2つは極めて重要なスキルです。そういう能力を既に身につけている人なら、チャンスはいくらでも提供できますよ。

そして変化を推進するのが、これまでと違った発想、スキルの持ち主です。新たな仲間を加えることで、私たちはさらに進化したいと思います。

編集後記

チーフコンサルタント
松本 俊介

時代のニーズを読み、半導体分野から医薬品分野へ事業転換をされた同社は、女性割合が約3割、外国人割合が1割など、様々な経験を持った人材が活躍されている多様性が大きな特徴であり、強みでもあると思います。形を変えながら拡大できたのも、森社長の柔軟な考えから醸成された多様性を受け入れる社風だからこそ。新たな変化を恐れず、挑戦を続けることで成長を遂げられたのだと感じました。ますます発展が期待される医薬品分野で、海外展開も進める同社に今後も注目していきたいと思います。

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